残酷Emperor
てかこいつ、俗に言う……シスコンですか?
まあ、確かにあんなに可愛い妹がいたらそうなるのもわかるけど……。
すると男はフッと笑った。
こいつ……なんて笑い方するんだろ。
私は貴族チックな男の格好をまじまじと見た。
「……コスプレ……趣味?」
思わずそう言い私は口を噤んだ。
「違う」
「じゃあ何でそんな格好……
その時、白いシルクの手袋が私の口を塞いだ。
「ふがふがふが!」
必死にその手から逃れようと抵抗する。
男は黒いコートの中から何かを取り出すと私の顔の前で止めた。
そこにはーー真赤な顔で私に懇願する健二の姿が写されてあった。
「この男、俺の可愛い妹を狙ってるみたいだけど、無理だからって言っといて。
はっきり言って、……俺以外の男は全員獣だから。野獣だから。逃げたみたいだから、君から言っておいて? ……綾乃は諦めろって、……ね」
口を半分開けたままの私に再びスマイルを見せると、男は立ち去って行った。
凄く綺麗な人……。
だけど氷のように冷たい。
それが“彼”の初めて見た印象だった。