揺蕩い-タユタイ-
「珍しいよな、そんなに飲むのは」


そう言ったのは目の前に座る同僚兼親友。

そう、普段の私はこんな風にガバガバ飲んだりしない。

どちらかというと、飲み会という雰囲気を楽しむだけで食べに走ることが多い。

だけど今日は――


「だって飲みたい気分なんだもん」


もちろんそれには理由がある。

ああ、思い出したら泣けてきた。


「ごめん、ちょっとトイレ」


溢れだしそうな涙を堪えながら席を立った。

そんな私に彼は「大丈夫か?」と聞いてきたけれど、きっと涙しそうになっていることには気付いていない。

だから一言「大丈夫」と言ってからトイレに向かった。

個室に入ったとたん、我慢していた涙がぶわぁーっと溢れてきた。
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