誘惑図書館
急いで首をふる。
「仕事がありますから。それに応援は、私がいなくてもたくさんの人がいますから」
大学の図書館で司書として働く私が、その仕事を放り出して恋人の応援に行くなんて無理だ。

「ふーん。だったら、俺の勝ちになるのかな。あなたをここから引きずり出せれば」
ふいに、強い風が吹く。
風は乱暴にカーテンを揺らすと、カウンターにのっていたプリントまでも舞い上げた。
パラパラと、白い紙が宙を舞う。
慌てて手を伸ばすと、口の端だけを上げて笑う人が、風の中にいた。
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