秘密の恋

二週間を待たずして、読み終えた本を持参して図書館を訪れた。

閉館の札を横目に裏口から入る。
 




「この本 面白かったでしょう」


「えぇ まぁ」


「喪服の女は刺激を求めている」


「えっ?」


「誰かに黒い服を脱がせて欲しいと、心のどこかで願っている」


「そんなこと」


「そんなことないとは言わせない。あなたにも願望はあるでしょう」


ありません、と言えなかった。


「彼はもういない」


閉館後の暗い館内に、私と彼の声だけが響いていた。


黙って差し出された左手に、迷いながらも手を重ねた。

彼の手が私の腕をせりあがり、むき出しの肌を刺激する。


「脱がせて……黒い服を脱がせて……」


満足な笑みを浮かべた顔のまま、私のスカートをたくし上げる。

彼の手が、黒いストッキングにそっと忍び込んだ。


肌を伝う手の温かさと、薬指にはめられた指輪の冷たさに、

私の理性は砕け散った。

 



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