秘密の恋
映画完成記者会見の雛壇へ、男優Yと手を繋いで上る。
フラッシュを意識した男の手が私の腰を引き寄せ、私も妖艶に微笑んで
みせた。
一通りの質問のあと、映画初出演のTにマイクが向けられ、
今回の撮影で得たものは何かと、女性週刊誌の記者から質問があった。
「Mを心で抱きました。愛しています」
「プライベートでも、ということですか」
「どのように受け取ってもらってもかまいません」
Tの答えのあと、会場は異様な熱気に包まれた。
Mとは私が演じた役名だった。
端役のクセに俺に張り合うつもりかと鼻で笑う隣の男へ、私はこう告げた。
「別れましょう」
「はぁ? 冗談だろう!」
さよなら、と言い残して会見場を出ると、記者を引き連れてTの楽屋に向かい
扉を開けた。
「心から抱いて」
私は、腕を広げたTの胸に飛び込んだ。
本物の愛情こそ映画の宣伝に効果的なのよ、と彼の胸でつぶやいた。