青空、ハレの日☆年中ハレバレ
「おい、テメェなんで反撃しないんだよ!」

 僕が下からもうすぐ来るであろう店員さんを気にしていると、男の方がそう訊いてきました。

 なに、簡単なことです。

「僕は、この身で助けられるなら逃げも隠れしますし、時には盾にもなります。争いは新しい憎しみや悲しみを生むことだってあります………
 なんて、言ってみるのですが、基本的に争い事は嫌いなんです」

 ちょっと気恥ずかしくなってしまいましたが、これは僕の本心です。

 でも───

「でも、もし……理不尽な理由で誰かが傷つけられてしまったら……僕はその傷つけた相手には容赦はしませんよ」

 例えば、そう……あなたとかね。


 って、冗談ですよ。そんな人を怪人のような目で見るのは止めてくださいよ。

 こう見えても僕は、ヒーローなんですから。


§


 あの後、予想通り階段を上がってきた店員さんに赤坂さんが事の顛末を説明してくれて、三人のサラリーマンさんは店が呼んだ警察の方々に連れていかれました。

 そういえば赤坂さん、酔いは冷めていたのですか?


 という質問を口に出せないまま僕たちは、あの居酒屋を後にしました。

 お三方はまだ目が覚めていないので、僕がまとめて担いで運んでいます。

 さすがにちょっとキツイです。特に早沱さんが。

「あの、大丈夫ですか?」

「なんとかいけそうです」

 逆境を乗り越えるのがヒーローの宿命なら、乗り越えましょう。

 うっ、北郷さん、首は絞めないでください。

「あの……すみませんでした。殴られたところ怪我してないですか?」

「平気です。それに赤坂さんが謝ることではありませんよ」

 北郷さんの腕で絞まりかけた首を軽く跳ねて修正してから、僕は返しました。
 やはり首が絞まった状態は喋り辛いですからね。

「えっと、ありがとうございました!でも、あの台詞はちょっと恥ずかしい……ですよね!緋上さんも酔ってたんですか?」

「え、えぇ、まぁ………そう………ですね」

「やっぱり!」

 実は酔っていませんでしたとは、今さら言えなかったです。
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