青空、ハレの日☆年中ハレバレ
 僕が数秒程、その髪を見ていると、赤坂さんが突然顔を赤らめて、前髪でも被っていない自分の額を掌で被いました。

「あ、あんまり!オデコ見ないでください!」

「あ、す、すみません!」

 反射的に握手もほどいて謝ってしまいましたが、僕が見てたのは髪なんですけど………まぁ、店長さんや皆さんが笑ってるからこれでいいでしょう。


§


 僕が店長さんから与えられた仕事は食器洗いでした。飲食店の基本ですね。

 この店は柑橘系の香りがついた洗剤を使っているんですね。好きな香りです。

 この香りを楽しみながら食器洗いをさせてもらっていると、後ろから誰かがやって来ました。

「うわ〜、緋上さん、手際いいですね〜」

 僕の手元を覗くなり赤坂さんが言います。接客業が一段落したようですね。

「ありがとうございます。これでも食器洗いは慣れているんです。フリーター生活長いですから」

「そうなんですかぁ。あ、私、この近くの大学に通ってるんです」

「あ、やっぱり学生さんでしたか」

 どうりで薄化粧という感じでしたね。まぁ、最近は女子高生でも濃くやる方いらっしゃいますが、僕は薄めが好きですね。

「学年はいくつなんですか?」

「三年です。だからそろそろ将来(さき)の事を考えなきゃな〜とは、思うんですけどね」

 腕捲りして僕の食器洗いを手伝ってくれ始めた赤坂さん。

 ありがとうございます。

「焦る必要はないと思いますよ。落ち着いていればきっと答えは見つかりますよ」

「え〜〜もう、他人事だと思ってぇ」

 あれ?もしかして気を悪くしてしまいましたか?
 でも、ちょっと声の聞こえからは、それは感じられないのですが……

 僕が判断に迷っていると、赤坂さんは店長さんに呼ばれて、接客の方へ戻っていきました。
 去り際に僕に「それじゃ!」と言ってくれたので、嫌われたわけではなさそうです。
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