青空、ハレの日☆年中ハレバレ
 とりあえず、僕は食器洗いの仕事に戻りますが、何やら店の方で聞き慣れた声が聞こえてきました。

『スペシャルハンバーグセットとナポリタン!』

 天羽空兎ちゃんですか、ここまで声が届くと言うことは店内は、かなり強烈に響き渡ってますね。

「空兎ちゃん、今日も元気ですね」

 流しの中で、食器同士がぶつかり合う音……

 勢いよく落ちる水道の音……

 それらが、やけに心地よく聴こえてきます。


§


 オレンジ色の日が沈む方角が西なんだと知りながらも、いざ方角を訊かれるとわかりませんよね?

 夕方の六時前になると、シフトが交代する時間で、滞りなくそれも終了。

 僕らのシフト班は、揃って店を出ることになりました。

「あ、緋上さん。これから何か予定あります?皆と話して飲みにでも行こうかなって思うんですけど……」

 赤坂さんの提案に僕は賛成しかけましたが、そこで少し考えて思い留まりました。

 今はこれしか仕事がなくて、しかもこの仕事も一ヶ月のタダ働きが条件。


 そう、僕……いや、僕らは今、“奇跡”を追い求めて冒険をしているわけですが、その道中のトラブルでこのファミレスに多大なご迷惑をかけてしまったので、僕がこうして働くことに相成ったのです。


 でも、さすがにタダ働きは厳しいですよね……。

 よし、時間外も働かせて頂いて、その分はお給料頂けるよう、これから店長さんに相談してみましょう。

 僕はそのことを(もちろん“奇跡”のくだりは伏せて)赤坂さん達に話すと、皆さん少し残念そうでしたが、ちゃんと納得してくださいました。

「じゃあ、まぁ、次の機会ですね」

「はい、その時は是非。皆さん、お疲れ様です」

 笑顔の赤坂さんとお三方に見送られ、僕は店へと戻りました。


 幸運なことに僕の提案はすんなりと店長さんに受け入れられました。

 話の分かる方で助かりましたよ。
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