青空、ハレの日☆年中ハレバレ
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 誰もいなくなったファミレスというのもまた不気味なものですね……

 流し台に山積みにされている食器が僕の残業だそうです。

 閉店前のシフトである先輩方の言い付けです。

 店長は所用で店を出て、まだ帰ってきません。夜遅くまでお疲れ様です。

 とにかく、店長さんが帰ってくる前にこの山積みの食器を全て洗いきらなければ、先輩方の方へご迷惑が掛かります。

「やりますか!」

 と、気合いを入れてみましたが、お皿を取るときは用心して、まずは上の方から………と、お、あ、ふぅ……

 あやうくもう一時間多めに働くところでした。これを洗って………………と、よし、洗った皿はこの隅に置いておきましょう。

 さて、次は、と………おや?
 なんか、妙な気配を感じますね。それに話し声も……強盗類の方だったら丁重にお帰り願いたいのですが……

『か、勝手に入っちゃ、やっぱりマズイだろ……』

『だって空いてたんだもん』

『だからって、入っていいこにはならないよ……』

 あぁ、この声は……

「何をしてるんですか?」

「わ!」

「にゃむ!」

 僕が厨房から店の方へ顔を出すと、仙太くんと空兎ちゃんが同時に驚いた顔をしました。ちょっと面白いです。

 でも、高校生がこんな夜中に出歩くのは感心しませんね。


「いや、あの、空兎がどうしても緋上さんの様子を見に行きたいって家を飛び出しちゃったんですよ……本当なら、昼間に様子を伺うつもりだったんですが、どうにも見当たらなくて」

 成る程。だから、昼間はお客さんとして来てくれたんですね。

「今日はもう諦めようって言ったんですが、我慢できなかったんですよ空兎は。結局のところ、『自分が迷惑をかけちゃったからって』」

 え…………?
 空兎ちゃんが、そんなことを?

 僕が意外そうな顔をしていると、空兎ちゃんは気恥ずかしそうに体をモジモジさせている。

 トイレなら、あっちですよ?

「いや、トイレじゃないんです………その、あの」

 言いにくそうな空兎ちゃんは、やがて意を決して、僕に言ってくれた。
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