婚約破棄
確かに、あの時は我慢できなかった。
小さくて可愛い子供が、泣きながらおしっこを漏らして下着を汚したこと。

だから打った。なぜ我慢できなかった、と。

「私、あなたがそういう風に子供に接するのを何度も見たわ。もう耐えられない!」

彼女は泣きながら、僕を捨てた。
僕達は、これから共に暮らす真新しい家の中にいた。
家電が揃い、電気もガスも通っていて、今日からでも住めた。

僕はキッチンから包丁を手に取る。
去っていく彼女はブーツを履くために、玄関に座って背を向けていた。

僕は包丁を手に、彼女に近づいていく。
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