婚約破棄
からん、と扉が鳴って僕は店の中へ入っていった。

「すみません、今日は貸しきりでして」

店員が僕に言う。
店の前の看板を見ると、確かにそう書いてある。

結婚式の二次会か……。

なんて奇縁なんだろう。
僕が顔を歪めて店を出ようとすると、

「構わないわよ」

黒髪の綺麗な女の人が呼び止めた。

「どうせ結婚式は中止になったの。花嫁が教会に押しかけてきた元彼と逃げちゃって」

「それは……悲惨だね」

僕は花婿に同情した。

「だから今夜は慰安会」
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