キミのとなり
今でも忘れられない12月のある日。
俺が教室で部活に行く仕度をしている途中に、和希が顔の血相を変えて教室に飛び込んできた。
『羅斗!ひかりが!!』
『は?!どうしたんだよ!?』
『体育館裏で女子部員全員にバケツで水かけられてる!!』
『!!!』
俺は急いで体育館裏へと走った。
『ひかり!!』
女子部員全員がひかりを囲んでる。
でも、俺がいることに気づくと、全員その場から逃げ去って行った。
『おまえ…いじめられてるのか…?』
アイツは俺を見て優しく笑った。
『ううん!いじめらてなんかないよ。みんなで水遊びしてたの。』
『なんで冬に水遊びなんかするんだよ?てか、おまえだけじゃん、濡れてるの。』
『私が提案したの。水遊びしようって。でも、みんな、こんな寒い日に濡れたくないって言ったから、じゃあ私にだけ水かけてって言ったの。私ね、実はドMなんだ!』
アイツのめちゃくちゃな言い訳と作り笑いが俺の胸をきつく締めつけた。
本当はアイツをいじめてる奴らに『ひかりをいじめるな。』の一言ぐらい言いたかった…。
でも、もしも俺がそれを言ったらアイツが余計いじめられる。
だから正面から堂々と守ることなんかできなかった。
『もう二度と冬に水遊びなんかするなよ…。』
『うん。ごめんね!心配かけて。』
『心配かけるって思うなら最初からこんなことするなよ…。』
『そうだよね…。』
アイツは俺の前ではいつも笑顔だった。
でも、その笑顔がもう見られなくなるなんてこのときは思ってもいなかった。