君の字 <<==短編==>>
 那緒が階段に向かって走っていく。


『あぶないっ』



 俺は無我夢中で走った。






 那緒が落ちる。


 でも、絶対に失ったりしない。





 もうこれ以上、那緒を傷つけたりしない!



「危ねー」




 俺は那緒を助けるために、後ろから那緒を抱きしめた。



 思ったよりも那緒は小さくて。






 俺は緊張しているのがわからないように声を押し殺して言った。



「この手紙、那緒だろ」

「んなわけないじゃん」



 そう言った那緒だけど、絶対那緒のはず。



「いや、この字は那緒の字だ」




 だって那緒の字は覚えているから。
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