双子の姉妹の マキとマイ
あと少しで、扉に足がかかるとき、嫌いな声が私たちの足取りを止めた。


「こっちに来るのは、やめたほうがいいと思うけど?」


扉の向こう側には、イル以外にもう一人いた。


髪は漆黒で飴細工のようにツヤツヤ光るひかえめな唇を、かたく閉じている。


細く長い指先でリンゴを支えて、トロンとした垂れ目を鋭く光らせ私を見ている。


私はムーっとした顔でつぶやいた。


「ルルア…」


ルルアは、ツヤツヤ光るひかえめな唇を、優雅に動かしながらおっとりと言った。


「別に私はあんたのこと嫌いだけど、死んでほしいとまでは思ってないわ。これは忠告よ。私なら絶対にそれ以上こっちに来ないわ」


私は『死』という言葉を聞いて、ゆっくり扉からはなれる。


ルルアはくるくるとリンゴを二三回、器用に回すと扉に向かってポイっとリンゴを投げた。


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