【中編】桜咲く季節に
スローモーションのように、コマ送りされるその光景を見つめる。

一瞬目の前の出来事をすぐに理解できなかった。

だが…

身体は無意識に動いていた。

跨っていたバイクから素早く降りると、手にしたヘルメットを放り出し、両手を差し伸べて舞い上がった桜を受け止める。

人間を受け止める事を意識して、それなりの重さを予想していた翔は驚愕した。

彼女は余りにも軽く、まるで人ではなく桜の花の精では無いかと錯覚させられるほどだった。

彼女を跳ね上げた車はコントロールを失い、そのままガードレールに激突して止まった。



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