みじかいおはなし
ある小さなさよならについて


今でも時々思うことがある。

あのとき私が、
「いいよ」って言わなかったら、どうなってただろうって。

君の中では、もう答えが出ていたわけだから、きっと何も変わらなかったんだろうけど。


馬鹿な私は、未だに君の影を追いながら、
あのときのことを少しだけ悔やんでいるんだ。





ある小さなさよならについて





日曜日の午後9時過ぎ。
そろそろ、携帯が鳴る時間だ。

もう何時間も前から、そわそわして落ち着かない。
無駄に立ち上がっては座り、座ってはもじもじと動いてまた立ち上がる。
テレビを見ているのに、その内容は一向に頭には入らない。


もう少ししたら、きっと彼からの着信で私の携帯は震えるはず。

大事そうに携帯を抱えてる自分に気づいて、少しだけ恥ずかしくなる。
中学生のときに初めて恋人が出来たときから、なにも変わっていない。

もういい年なのにね、と呆れながらも、その手は携帯を放そうとはしない。



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