哀しい偶然


彼は散らばった資料を集めて私に手渡すと、


「ちょっと待ってて!!」


そう言って
すぐに近くのコンビニでマキロンとティッシュとばんそうこう



それに…黒いストッキングを買ってきてくれて





「ごめんな。
ヌーディなタイプよりもこっちのほうが、傷が目立たないと思ったから…。」





恥ずかしそうに頬を染めながら
コンビニの袋を渡してくれた彼を見て…



私は泣きたいくらいに嬉しくなった。





さっきまで人の冷たさを感じて、絶望して、泣きたいくらいの不幸を味わっていたのに今はどうだろう。



心の中が真冬のココアのように温かく、甘く、柔らかになってきて、思いがけない喜びに私は泣いてしまいたいくらいに幸せになってしまった。




『あ、ありがとうございます!!
後日お礼をしたいので、連絡先を教えていただけますか??』





そう言いたかったのに……




「あ!いけない!
打ち合わせに遅刻しちゃう!!
ご迷惑かけてすみませんでした!ありがとうございました!!」




私はそう言って
逃げるようにその場を後にするしかなかった。





心の中に芽生えてしまった
小さな甘い疼きには気づかないフリをして。



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