密の味~恋と憧れ~


確かにここの蔵書量は少ない。


本好きなら本館の方がいいに決まってる。


だから親切で言ってくれてるんだろうけど、少し困った。


どう言い訳しよう……。


「えと……」


私は考えながら、もごもごと呟く。


「ここ自宅から近いんです。だから……」


「理由はそれだけですか?」


「? はい」


「……そうですか」


どこか含みのある言葉がやけに引っかかった。


「残念」


「え?」


「てっきり俺を見に来てるんだと思ってました」


「なっ!?」


いきなり理由を言い当てられて私の体温は一気に上昇する。


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