十八番-トバチ-





(シドゥ村へ・・・・。)



バチィ!




「・・っ!」


「和真!おい、大丈夫か!」


「・・う、うん」



目の前のハナビが青い顔でこちらを見ている。
周りの人も何事かと首をかしげているし、
相当自分は意識を飛ばしていたらしい。



「はー・・びっくりした。
何やってんだよー!


いきなり走りだすからだって」


「ごめんね」


「・・ま、いーけどな。
あ、これ!」


「ん?」



見てみると、立ち上がったすぐ脇に画が飾ってあった。
白い色紙に彩られた水彩。
可愛らしく猫の絵が描かれている。



「水彩画?」


「祭でもまだこんなの売ってたんだな!
おっちゃん、これいくらっ?」


「悪ぃな、画は看板道具なのさ。
だから売ることは出来ねぇ」


「えー・・だったら飾るなよぉ」


「ふふ、でも現にこうして役目を果たしてるよ?」


「・・俺は画が好きなんだよ、画が!」



ぷん、とそっぽを向く姿が年相応らしくて笑えてしまう。
ハナビは画が好きだった。いつか都に行って文化を見に行きたい、
だから勉強するんだ、とも言っていた。


(・・でも、画自体はあんまり上手くないんだよね)




本人にはとても言えないけれど。



「刀鍛冶の息子なのにね?」


「ばっ・・・おまえそれ今関係ないだろっ!?」


「重要なことじゃない。おじさん、残念がってたもの」


「・・家族だからって、継ぐのはまた別問題っ」



そう言いながらも、蒼炎のことは本当に大事にしている。
なんでも、生まれた時から自分にとって一番大切なものらしくて
いつも肌身離さず持っている。


(おじさんがうった剣なのかな)



< 10 / 26 >

この作品をシェア

pagetop