十八番-トバチ-
(シドゥ村へ・・・・。)
バチィ!
「・・っ!」
「和真!おい、大丈夫か!」
「・・う、うん」
目の前のハナビが青い顔でこちらを見ている。
周りの人も何事かと首をかしげているし、
相当自分は意識を飛ばしていたらしい。
「はー・・びっくりした。
何やってんだよー!
いきなり走りだすからだって」
「ごめんね」
「・・ま、いーけどな。
あ、これ!」
「ん?」
見てみると、立ち上がったすぐ脇に画が飾ってあった。
白い色紙に彩られた水彩。
可愛らしく猫の絵が描かれている。
「水彩画?」
「祭でもまだこんなの売ってたんだな!
おっちゃん、これいくらっ?」
「悪ぃな、画は看板道具なのさ。
だから売ることは出来ねぇ」
「えー・・だったら飾るなよぉ」
「ふふ、でも現にこうして役目を果たしてるよ?」
「・・俺は画が好きなんだよ、画が!」
ぷん、とそっぽを向く姿が年相応らしくて笑えてしまう。
ハナビは画が好きだった。いつか都に行って文化を見に行きたい、
だから勉強するんだ、とも言っていた。
(・・でも、画自体はあんまり上手くないんだよね)
本人にはとても言えないけれど。
「刀鍛冶の息子なのにね?」
「ばっ・・・おまえそれ今関係ないだろっ!?」
「重要なことじゃない。おじさん、残念がってたもの」
「・・家族だからって、継ぐのはまた別問題っ」
そう言いながらも、蒼炎のことは本当に大事にしている。
なんでも、生まれた時から自分にとって一番大切なものらしくて
いつも肌身離さず持っている。
(おじさんがうった剣なのかな)