十八番-トバチ-
そんなことを考えていると。
店の奥にいたおじさんが目を見張って、ほぅと言った。


「なんだ、おまえテツさんのガキんちょか。
おーきくなったなぁ!」


「なに言ってんだよおじさん。
いつの話してんだか・・・」


「いや、テツさんの息子ってんなら話が違ぇ!
おい坊主、画はやれねぇが書いていってもいいぜ?」


「・・自分の書いた画なんかもらって嬉しいか?」



「水彩画も色紙もタダでやる、つってもか?」



「!!」



ハナビは一瞬こちらを見てからにかっと笑って、
僕の手を引きながら急いで奥へと走る。


「おぅ、やる!
ただなおっさん、画を描くのはこいつだ」


「はぁ?」


「えっ、ちょっとハナビ!」


そんなことになるなんて聞いてない、とばかりに
反論しようとする僕にハナビは少しばつが悪そうに言った。



「・・いーだろ、一個くらい思い出くれても。
おまえ、画ぇ上手いじゃん。
俺おまえの絵、好きなんだ」



「ハナビ・・・。
うん、わかった」



嬉しそうに笑ったハナビに、やっぱりokして良かったと
思いながらおじさんから色紙と絵具を受け取る。



「何を書こうかなぁ」


「何でもいいって」


「それはだめだよ。せっかくハナビにあげるんだし」


「んー、そっか。
あ、でも俺の名前みたいに花火を書く!とかはナシな」


「くすくす、分かってるって」
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