十八番-トバチ-
「・・よーし、できた!」


「おぉ、やるじゃねぇの坊主!
人物画とは!」


「ん、人!?」


「あんまり描いたことなかったから、
挑戦してみようと思って。
いつも動物ばっかりだったし」


「・・気に入らなかったかな」



手渡された画を見て驚く姿に、もしかしたら
希望とは違ったのかもしれないと不安になる。

描きたいように描けたから自分は満足だったけど、
彼としては少し物足りなかったのかな。



「そんなことねーって!
人だろうが動物だろうが、おまえの画には変わりないよ」


「ハナビ・・・」


「さんきゅーな、和真!大事にする」


「うん!」



満面の笑みでそう答えられて、
思わずこっちまで笑顔になってしまった。




(ハナビが喜んでくれてよかった)





「おっさん、本当にタダでもらっていいんだな」


「おー。いいってことよ。
祭りはまだまだこれからだし、あんまり遊びすぎてハメ外すなよ」


「そんなヘマしないって!」



おじさんの店を出て再び街道に出る。
意外と時間がたっていて、夜のせいか人通りは増えていた。

子供たちだけでなく大人も増えてきて
ますます視界が悪い。



すれ違う人との衝突を避けようと、
2人は大通りの隅を歩いていた。



「祭りはいーけどさ、毎年困るのがこれだよな」

「狭い町だから仕方ないとは思うけど・・
確かに、中町にこれだけ人がいるのは珍しいね」

「・・もしかしたら、あれのせいじゃないのか」

「あれ?」


首をかしげる僕に、ハナビは意味深な顔でささやいてくる。



「あれだよ、あれっ。
おまえもさっき見ただろ?

並町にいく人籠!」


「あ・・・」


「あんな極悪人の乗った籠が自分の居る町にあったら、
そりゃ他の場所にも行きたくなるさ」


「・・・・うん、そうだね」



(・・だけど)



本当に、どうしてこの町にやってきたんだろう・・。



あの人は、一体何をしたのかな。





< 13 / 26 >

この作品をシェア

pagetop