十八番-トバチ-
「和真!!」



「えっ・・?わっ!!」



どんっ



ぼうっと歩いていたらそのまま人にぶつかる。
ふらついた体をすぐ立て直そうにも、
人の波に押されてしまって動くことさえままならない。



「・・っ」


「和真、大丈夫か!?おーい!」


ハナビの声が遠くに聞こえる。
知らないうちにずいぶん遠くに流されてしまったみたいだ。


「っハナビー!!」


「和真!どこだ!?」


「・・っここっ・・・わぁっ」


道行く人、誰が誰だかわかっていないらしかった。
自分のことで精一杯で、とても他人のことを見ている暇がない。
それほどに、今の大通りは混んでいた。



(・・っだめだ、一旦流れから抜け出さなきゃ)



和真はやっとの思いで端に出る。
しかしよく見ればもうそこは中町の端で、
人の通りも少なくなってきていたところだった。




「・・はぁ、えっと、ハナビは・・・」



たぶん、おじさんの店があるあたりはもっと中心街の方。
ここは端だし、探すのも大変だろう。
それに、もし探していたら逆にハナビまで巻き添えを喰らって、
両親が心配するかもしれない。





「なんとかハナビに連絡する方法を考えないと」



(・・・あれ?)




「ここ・・・」



「並町と中町の境目だぜぇ、坊主」











< 14 / 26 >

この作品をシェア

pagetop