十八番-トバチ-
問いかけた相手は、ひどく仏頂面をしていた。
自分が問いかける前からそうだったけれど、
言葉を発した瞬間重い表情がぐん、と重くなる。



獄にいる警官は、常に気を張り巡らせていなければ
ならないため、神経質になりがちだと聞いたことはあったけど。



(ここまでなんて想像してなかったーっ!)


手に持った銃を今にも振り下ろされてしまいそうな剣幕。




「・・」


「あ、あの」


「今なんと言った」


「だからですね、中に入れてもらえないかと・・・」


「一般人が獄の中に?」




その台詞だけで、答えが否であることは言わずともわかった。
まぁ素直に入れてもらえるとは到底思っていなかったが、
少しはへこむ。


(・・これからどうしようかな)



一目でもいいから、顔を見られたらな・・・。
そしてあわよくばちょっとだけお話もできたら・・・。




「どけ、餓鬼」


「・・わっ!?」



小さい体の和真は、押されただけで簡単に飛ばされた。
固い地面にむき出しの腕が擦れ、小さく裂傷が走る。



「痛っ・・・」



思わず腕を抑えれば、周りからひそひそとまた声が聞こえてきた。
目の前には、先ほどとは違う男の人。



「うろちょろするな。目障りだ。
餓鬼は祭りでも行っていればいいだろう」


「・・で、でも僕あのっ・・・」


「・・なんと言われようが、中に入れるわけにはいかん。
入場料を持っているわけでもあるまいし・・・」


「お金が要るんですか・・?」


「当然だ」




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