十八番-トバチ-
「おい、そこを動くなよお前等!
少しでも動けば殺す」


がやがやとうるさい雑音に交じり
聞こえてくる大声。
銃を突きつけたってそんなもの、
それくらいの覚悟はできてるような連中だ。


全く脅の道具として意味を成していない。






「騒々しいな。何事だ」


「はっ・・じ、実は先刻、獄の正門付近にて
ひと悶着あったようでして・・・」


「・・?にしては騒ぎが大きすぎるな」


「そ、それが。
唐隊長が正門の裏側、南門まで突き抜け壁を突き破ったとのことで・・
証言によるとその傍には少年がいたとか・・・」


「突き破った・・・。それで今必死で修復作業及び
囚人たちの管理に追われているわけか」



なるほど、それではこいつの相手などしていられる場合ではあるまい。



目の前にじっと座り続ける男を見やって、男は笑う。




深い新緑のような髪色は落ち着いた人柄を想像させる。
都から遠く離れた小さな村には見合わない装い。
磨き上げられた黒光するブーツを履いて、大きな紺色のコートを身に纏っている。
傍らには、その若き相貌には似つかわしくもない古びた杖が置かれていた。



「大変失礼いたしました。
国家防衛組織『縁--エニシ--』
第肆部隊統長、葉(ヨウ)様」


「そう畏まるな。たいそうなものではない」


「し、しかし」


「こちらに影響がないのなら勝手にやってくれ。
お前たちは通常業務を果たせばそれでいいのだから」



渋る警官を抑え締め出し、葉は改めて男と対面し息を吐いた。
疲労を感じるような、やれやれといった溜息である。
向かいの男はそれを見つめ、口に巻かれていた包帯をはずした。




「相変わらず、口が達者ですね」


「任務を遂行するためなら嘘も平気でつくさ。
おまえだってそうだろう?」


「・・・」



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