十八番-トバチ-
「それより、そちらの方はどうなんですか」

「あぁ、順調だよ?
さっき不破が喜び勇んで着替えてた」

「・・不安要素が一杯ですね」

「え?そうか?へーきだろ、あいつなら」

「そういう問題じゃなくて」



あっけからんと笑って見せる葉に、青年の溜息は尽きない。
着ていた囚人服を葉に預けると、外のドアから音がした。




「!」

「焦るな、剣をおさめろ」

「・・・」



それでも鞘には手を置いたまま。
部屋の空気が張り詰める。
葉は何食わぬ顔でドアに近づいた。






「あの、葉様」

「なんだ」

「いえ、その・・。

の、喉など渇いておりませんか!?
このような場所ですので、あまり味も美味しく
感じられぬかもしれませんが・・・」

「あぁ、そんなことか。
気にするな、問題ない」

「そ、そうですか。
失礼いたしました!」



再び慌てて戻っていく足音に、ふっと息をついて
青年はようやく鞘から手を放す。



「ご苦労なことですね。ご機嫌取りとは」

「今更したって無駄だってのが分かってないよな。
まー、俺はそんなこと、ちっとも興味ないけど」

「・・にしても、そんなに被害が大きいのですか」


目をツゥ、と細めて小さな窓の隙間に目をやる。



「そもそも、あの皇子様が変わり者なんだよ。
伝説とか御伽話とか、カミサマとか。

そんなものを本当に信じてるのか」

「・・・」

「・・ま、だから俺たちが駆り出されて
こんな小さな村までやってきてるわけなんだが・・・」

「・・・」

「キヨ?」








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