十八番-トバチ-
「・・なぁ、おまえはどういったら納得するんだ」


「え?」


「いつも言ってる。
このやり取りだって、初めてじゃないしな。

けどおまえはまた同じこと考えて、
また俺に遠慮して、俺のこと突き放すし」


「!ぼ、僕そんなつもりじゃ・・」


「分かってるよ。おまえがそんなことしないって。
けどしてる。おまえが俺の言うこと、信じてくれない限り」


「・・ハナビ」



彼は苦笑してから僕の頭をぽん、と撫でた。
優しくてあったかい、夏の夜に浮かぶ花火のよう。
名前にそぐわない綺麗な手。

いつも自分の先を行く兄のような彼が、和真には憧れだった。



ぽぅ、と呆けた顔で彼を見つめていたら。
わしゃわしゃっと今度はくちゃくちゃに撫でられる。


「わ!?ちょ、やめてよっ」


「おまえのバカが治るように叩き直してやるっての!
こんのー!!」


「ご、ごめんってばー!」




走りだせば、ハナビも追いかけて来てくれる。
笑いながら、夜の街に声が響く。
和真の顔が、嬉しさに緩む。



(・・楽しいな)






ずっと続いたらいい、こんな日が。








スゥッ・・・
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