一夜だけの禁忌
一夜だけの禁忌
「佐野さん、こっち!」
声をかけてきたのは課長で、その後ろには今日の主役がいた。
月島幹人。来週から転勤になる彼の今日は送別会なのだ。
スーツに包まれた、華奢で、けれどバランスのいい彼の姿に鼓動が速くなる。
まさか、彼が転勤になるなんて……思わなかった。
予め予約した居酒屋の個室に入ると、
「じゃああたし注文取る係しますよ」
さりげなく、注文用インターホンの近くにいた彼の隣を陣取った。
最初に彼と出会ったのは説明会の時。
あたしは会社説明会の手伝いで彼は入社志望の高校生で……あれから5年。
大きくなった背中が頼もしい。
そんな彼に、あたしは惹かれていた。
8歳も若い彼に、一目見た時からどうしようもなく。
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