※ただし、あたしは大嫌い。





「…え?」




思わず顔をあげると、じっとあたしを見る佐倉くんと目があった。





「…浮かない顔なんて…してないよ。いつも通りだよ、いつも通り!」




「…そっか。だったらいいんだけど?」





佐倉くんはニコッと笑うと






「ただ…いつまでも素直にならないと、間に合わないこともある。
そのことだけは覚えといて」






それだけ言って、教科書取ってくる、と廊下に出て行ってしまった。







『いつまでも素直にならないと、間に合わないこともある』


そう言った時の佐倉くんの雰囲気が、なんとなくいつもと違ったような気がして。





気のせいかな…?





廊下に出ていく佐倉くんの背中を目で追いながらそんなことを思っていると





バチッ…






「…っ」





若宮があたしをじっと見つめていた。






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