※ただし、あたしは大嫌い。





トントントン、包丁で野菜を切る音だけがひたすら響く。




他のテーブルは、みんな楽しそうにバーベキューの準備をしているのに。




あたしと若宮だけは、楽しさなんて皆無の表情でひたすら野菜を切っていた。ただただ気まずい。





「…はぁ…」





思わずため息をつくと。





「…そんなに俺と一緒にいるのが嫌かよ」




野菜を切り始めてから初めて、若宮が口を開いた。





その口調は不機嫌そうで。



野菜を切る手つきもどこか乱雑。





「…別にそういうわけじゃ」



「じゃぁ何なんだよ?」




若宮は手を止めると、イライラしたようにあたしを見据えた。





その時、彩と一緒に、琴平さんがたくさんの道具を持って歩いてくるのが見えて。






「………」





思わず押し黙ると






「…そっか」





若宮がどこか自嘲気味に笑った。





「話しかけんなって言われてたな、そういえば。
悪かったな話しかけたりして」




そしてもうあたしの方なんて一切見ずに、ひたすら野菜を切っていく。






…そうだ。



話しかけるなって言ったのはあたし。




あたしだ。




…若宮とまた喧嘩したい、なんて…そんなバカなことあるはずがない。





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