※ただし、あたしは大嫌い。






「…っおい!」




慌てて汐里の肩をつかんで引き離すと、汐里はニッと悪戯っぽく笑って





「…じゃーね!


本気で好きなら、がんばりなよ!」






軽く俺に手を振って、歩いていった。






…本気で好きならがんばれ、か……






ふいにアイツの顔が浮かぶ。




アイツは本当に分かりやすい。




ちょっとからかえばすぐ本気にして怒る。






『よろしく!若宮くん!』



アイツとの出会いは、高校の入学式。


偶然隣の席になった俺とアイツ。




俺は自分でいうのもなんだが、かなりモテる。



女はみんな、俺をそーいう対象として見る。



でも、屈託なく俺に向けられたアイツの笑顔は、なんだかそれとは少し違うような気がして。






『…俺、なんかお前嫌い』





言葉に言い表せない違和感に、気付いたら俺は、そうアイツに言い放っていた。





< 223 / 312 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop