※ただし、あたしは大嫌い。
「…っおい!」
慌てて汐里の肩をつかんで引き離すと、汐里はニッと悪戯っぽく笑って
「…じゃーね!
本気で好きなら、がんばりなよ!」
軽く俺に手を振って、歩いていった。
…本気で好きならがんばれ、か……
ふいにアイツの顔が浮かぶ。
アイツは本当に分かりやすい。
ちょっとからかえばすぐ本気にして怒る。
『よろしく!若宮くん!』
アイツとの出会いは、高校の入学式。
偶然隣の席になった俺とアイツ。
俺は自分でいうのもなんだが、かなりモテる。
女はみんな、俺をそーいう対象として見る。
でも、屈託なく俺に向けられたアイツの笑顔は、なんだかそれとは少し違うような気がして。
『…俺、なんかお前嫌い』
言葉に言い表せない違和感に、気付いたら俺は、そうアイツに言い放っていた。