※ただし、あたしは大嫌い。
「あ、落ちた」
線香花火が、そのピークをむかえる前にあっけなく、コンクリートの上に落ちた。
「あーあ」
誰にでもなくそう行って、新しい花火を取りに行く。
すると、二人でどこかに歩いて行く若宮と琴平さんの後ろ姿が見えた。
…どこ行くんだろ。
心なしか、緊張して見える琴平さんの背中。
…もしかして告白?
そしたら若宮はなんて言うんだろう。
……付き合おう、って言うのかな、やっぱり。
「……あーっやめやめ!!」
大きな独り言を言って今度は大きな花火を手に取った。
山田くんに物凄く不審そうな目で見られたが気にしない。
…なんだか胸が痛いなんて嘘だ。
琴平さんは若宮のことが好きで。
あたしは、琴平さんを応援するって決めてて。
二人はお似合いで。
若宮だって琴平さんのこと、きっと―――
「…笑佳?花火終わってるよ」
「え゛」
気付いたら消えた花火を持って突っ立っていた。