※ただし、あたしは大嫌い。




取り出してみると




【若宮】




画面にそう表示されていた。





ってかあたし、若宮の番号なんて知ってたんだ…


電話なんてしたことないのに
何でこんな時に…
第一、今琴平さんと一緒にいるのに、一体何の用事だっつーの…



ブタのストラップが、ケータイの振動に合わせて揺れている。






これ、一緒に帰った時に若宮が買ってくれてたんだよね。




トイレ行くって言ってこっそりこれを買ってたんだと思うと、おかしくて。嬉しくて。






『こーしててやるよ』


『!?
なっ何この手は!?』


『怖いんだろ?』



あの時は無理矢理ホラー映画につれてかれたんだよね。
あのせいで確実に寿命縮んだなぁ。






『じゃぁね純情乙女心弄び野郎!!』



『はぁ?純情乙女?誰それ』



『あたしじゃ!!!!』




なぜかあたしの中学のクラス会にも来たよね。
よく来れたよね…






『いいか?優しい俺が教えてやる。
スキーっつーのはケツじゃなくスキー板で滑るもんだ』



『知ってるからそんな事!!』


『それが助けてくれた奴にとる態度か??』










『しょーがねぇからこれから毎日俺が勉強見てやるよ。


お前だから



……と、特別だ』








『大丈夫じゃねぇだろ。
来い、ボケっとすんな』










大嫌いなはずだった若宮との思い出が、いつの間にかこんなにも増えていて。





若宮は口悪いし喧嘩売ってくるしムカつくけど





…いつだって優しかった気がする。







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