※ただし、あたしは大嫌い。
でも、普通ってのは意識してしまうと、急に普通にできなくなるもので。
「……」
「………」
若宮までなぜか黙りこくってしまったから、気まずい沈黙があたし達を包む。
…そういえばあたし、琴平さんに若宮と話さないでって言われてたよね。
二人が付き合い始めても、それはずっとなのかな…
「……ま、よかった」
先に沈黙を破ったのは若宮だった。
「鼻の骨とか折れてなくて。
ただでさえブサイクが、これ以上とか救いようがないからな」
「…悪かったねただでさえブサイクで」
「……でもまぁ、その時はその時で」
若宮は、ふ、と目線をあげてあたしを見ると
「俺が貰ってやるから別にいいけど」
「…は?」
「……なんて」
意味が分からず茫然とするあたしから目を逸らして、若宮は自嘲気味に笑うと
「……もう遅いか……」
じゃーな、とパイプ椅子から立ち上がって、あたしに背を向けた。
どんどん遠ざかっていく若宮の背中。
『追いかけなかったら、遠くに行っちゃうだけなんだから。
…ほんとに欲しいものは追いかけなくちゃ』
…でも、追いかけったって
『―――後悔するよ?』
「…っ若み「やっぱ無理だ」
「…え…っ」
突然立ち止まった若宮は、走ってあたしの方まで戻ってくると
「…諦めるなんて、できねーよ…」
ギュッと、強く抱きしめた。