※ただし、あたしは大嫌い。
「つーか」
若宮が、ふ、と空を見上げて。
「もう夏だな」
「夏だねー」
六月ももう終わり。
濃くなってきた空の青が、夏の始まりを教えている。
「……三年の夏休みなんて、受験勉強ばっかなんだろうな」
「でしょうねぇ」
「…も、もう遊べるのも最後だな、今年が!」
「だねー」
それにしても今日暑い。
アイス食べたいな~
なんて道端のコンビニに目を奪われていると
「っだから!」
突然グイッと手を引かれて、驚いて見上げると不機嫌そうに、でもどこか緊張した面持ちであたしを見下ろす若宮と目が合った。
「…俺が言いたいのは、つまり、………」
「…うん」
いつまでも続きを発しようとしない若宮に内心首を傾げていると
「っど、どっか行くぞ!夏休み!!!」
乱暴にそう言い放って、あたしの手を握ったままズンズン歩き出した。