※ただし、あたしは大嫌い。
「……あのさぁ」
古典の授業中、こっそりと隣の若宮に話し掛ける。
若宮が女子に囲まれていないのは授業中くらいだから仕方ない。
「…………何だよ」
相変わらず不機嫌そうな瞳であたしを射抜く若宮。
「………あのさぁ。
怒ってるよね?」
「…………別に」
「嘘つけ!」
「………じゃぁ、俺が何に怒ってるって?」
「…そ、れは」
……何て言えばいいんだろう。
若宮のいたいけな恋心を軽々しく口に出してゴメンね?
じっと、何て言うべきか考えていると
「……聞きたいことあんだけど」
若宮が手元のノートに視線を落として言った。
「………お前の……「私語厳禁!」
バシ!!!
いつの間に背後にいたのか、古典の先生が丸めた教科書で若宮の頭を叩いた。
「いてーな!」
「期末テストが近いのに余裕だな、二人とも。今大事なとこなんだから集中しろ!」
「……くそ、授業どこじゃねぇんだよハゲが」
そんな悪態をつき(事実だけど)仏頂面で腕組みする若宮は、もうチラリともあたしを見ようとはしないで。
「…………」
仲直り?のチャンスを逃してしまったあたしも、大人しくシャーペンを握り直した。
……あぁ……なんか、気まずいなぁ。