アイドル逃走劇
いつの間に変えたのか違う帽子を被り、私のコートを勝手に奪うと、その中に二人窮屈に埋まる。
「あっちから行く」
肩をがっちり抱かれ、入口と反対方向にある非常口へと促され、心臓はもうはち切れんばかりでどうしたらいいのか分からない。
気付いたらサングラス姿になっていた将君は私をまだ強く抱いている。
「彼氏いるよね? 悪いね」
そう聞かれて思わず
「微妙」
と言ってしまう私。
無愛想でかまってくれない彼氏の愚痴はさっきも女子会でしてたところだ。