引越し祝い
床拭きからね。
あと、窓開けて空気も入れ換えてね。
ユニットバスもちゃんと洗った?

私が捲し立てると健は首を横に振って、黙って洗剤を持って部屋を出ていった。

彼氏に床拭きを任せて、私はキッチンの周辺を見る。
女っ気のない健はキッチンも質素で、必要な物が揃ってるとは言えない。

きっと毎日コンビニ弁当にお世話になる。

ため息を吐いて、備えつけの電気コンロと電子レンジを入念にチェックした。

部屋に戻って、待ちかねた顔をしているふたりの間に座る。

そうして引っ越し祝いの飲み会が始まった。のだけれど。

「彼氏くん、こんなに弱かったっけ?」

酔いつぶれて寝転がった彼氏の手には、ビール缶と空になった焼酎の瓶が握られている。
私は焼酎が飲めないので、ちびちびとビールを舐めていただけだ。

健は彼氏の抱いた焼酎をしっかり半分飲み干している。
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