時計の針の行方
様々な生徒と階段を擦れ違う際に、気付いたことが一つあった。
皆、若者らしく生き生きとした顔つきをしていた。
テストの話題を話す生徒。
夏休みの予定を語る生徒。
大会に向けての意気込みを話す生徒。
など、様々な話題が飛び交っていた。
その顔つきは若者らしく、精悍な顔つきだった。
ハヤトは、階段を上り終わり、廊下に掛けてある鏡をみた。
どことなく覇気のない表情。
それが今の自分の姿だった。
……
なんか、普通の人と違うな…
今まで、呆然と悪戯に時を過ごしてきたツケだろうか。
夢、希望、愛、そのような言葉を否定的に捉えていたからだろうか。
〝くだらねえ〟その単語がハヤトを冷ましていた。
夢なんてくだらない。
大人になっても夢なんかほとんど叶わない。
希望なんてくだらない。
希望よりも、絶望がほとんどを占める世の中だ。
愛なんてくだらない。
所詮、子種繁栄を望む生き物の自然行動だ。
ハヤトは、冷めていた。
それを心底、後悔していた。