時計の針の行方
「ああ… スマンな。
ただ、一つだけ理由があるんだよ」
「理由?聞かなくても分かる。
どうせ、女の子が来るからだろ」
「まあ、間違ってはないけどさ…
俺、工藤さんのことが好きなんだよ」
上江田が初めて漏らした好きな人。
高校生活が始まってから、上江田が好きな人をハヤトに打ち明けるのは、初めてのことだった。
「へえ…驚いたな…
今までそんな話聞いてことなかったし、第一、美空が好きなんじゃなかったのか?」
ハヤトはそう言った後、その場で鞄を持って立ち上がり、教室を出た。
上江田もハヤトに付き添うように、教室を後にしながら話す。
「美空さんは確かに綺麗だ。
だけどな、工藤さんは別の良さがあるんだよ。
なんというか… そう、優しい。 あの性格が好きなんだ」