時計の針の行方
先ほどまで、あれほどいた人も、今ではだいぶ少なくなっている。
食堂の出口を開けると、廊下には誰もいなかった。
「あそこのベンチに腰掛けようか」
そう言って、左前にある紺色のベンチを指差した。
美空も、「そうだね」と言った後に自分からベンチへと向かっていった。
美空は、ベンチの右端にちょこんと座り、ハヤトは美空の隣りに座った。
ミーン、ミーンと蝉の声が聞こえてくる。
後ろが窓になっている為、風通しもよく、暑さをあまり感じなかった。
「ねえ、ハヤト、ホントはこの世界に居続けたいんじゃないの」
…
開口一番からそれか…
「まあ、正直に言わせて言わせて貰うと
俺は、あまりこの世界から消えたくない」
美空にとって、最悪な答えが返ってくる。
さすがに、予想していたとはいえ、この世界に未練がある者を無理矢理消すのは、美空にとって胸が締め付けられるような思いだった。