時計の針の行方
「まあ、落ち着けよ…」
そう言いながら、先ほどから抱き締めている美空の背中を、ポンポンと優しく叩く。
正直、俺は女の子の扱いには慣れてない。
ただ、こうしてやることが、今の自分にとって、最良の選択ではないのかと感じただけだ。
「ばかっ…ハヤトのばかっ…」
小さい声で泣きながら必死に声を出す美空。
言葉とは裏腹に、両腕をハヤトの背中に巻き付けて泣いていた。
「ああ、俺は馬鹿だよ。
今更、知るなんて、美空も鈍いなあ…」
ハヤトは、ハハッ…と笑った。
笑いながら、美空の頭を撫でる。
美空の腕が、キュッとハヤトの背中を強く巻き付ける。
その間も、ハヤトは左手で背中を優しく叩いていた。
「どうして… どうしてこんなに優しくするの?
ばかっ…ハヤトのばかっ!」
ハヤトの胸の中で、乱暴な言葉を吐き続ける美空。
しかし、真意で言ってるわけではないことは、ハヤトは百も承知だった。