時計の針の行方
「あなたが優しくなければ…
こんなにも他人思いでなければ…
情が移ることもないのに…」
ハヤトは無言で美空を抱き締め続ける。
途中、先生や文学部の生徒が廊下を通ったが、ハヤトは気にしなかった。
美空は、顔を上げることもなく、ハヤトの胸に顔を押さえ付けながら話を続ける。
「ねえ… 私、怖い…
ハヤトを消さなきゃいけないのに、今のままじゃ消すことが出来ないかもしれない…」
ハヤトは、この時、初めて美空の気持ちを理解した。
情に流されることもなく、使命を真っ当しなければならない現実。
16歳の少女には荷が重い使命だった。