時計の針の行方
それから、三十分以上が経った。
先ほどから、延々と泣いていた美空も、今では泣き声を聞くことはなかった。
もしかして、寝たかな?
そう思い、背中を擦っていたハヤトだが、美空からの小さい声に気付いて、その手を止めた。
「ハヤト、ありがとうね…」
この“ありがとう”の意味をハヤトは少しだけ理解できた。
といっても少しだけ。
ちょっとだけなら理解出来たんだ。
まだ、全部を理解するまでに到達してないけれど
それはそれで良いんじゃないか
俺は、美空を抱き締めながら思った。
「美空、そろそろ戻るか?
いい加減、顔も戻っただろ」
美空は、ゆっくりと顔を上げた。
その顔は、いつもと変わらない美空の顔だった。
パッと見、先ほどまで泣いてたとは、他人には分からないだろう。
「ハヤト…私、めぇ赤くない?」