時計の針の行方

それから、三十分以上が経った。
先ほどから、延々と泣いていた美空も、今では泣き声を聞くことはなかった。


もしかして、寝たかな?

そう思い、背中を擦っていたハヤトだが、美空からの小さい声に気付いて、その手を止めた。


「ハヤト、ありがとうね…」


この“ありがとう”の意味をハヤトは少しだけ理解できた。
といっても少しだけ。

ちょっとだけなら理解出来たんだ。


まだ、全部を理解するまでに到達してないけれど

それはそれで良いんじゃないか

俺は、美空を抱き締めながら思った。


「美空、そろそろ戻るか?
いい加減、顔も戻っただろ」

美空は、ゆっくりと顔を上げた。
その顔は、いつもと変わらない美空の顔だった。
パッと見、先ほどまで泣いてたとは、他人には分からないだろう。


「ハヤト…私、めぇ赤くない?」
< 140 / 159 >

この作品をシェア

pagetop