時計の針の行方
「赤くないさ、可愛い顔してるよ」
美空は、フフッと笑い、答える。
「ハヤトって、お世辞は下手なんだね」
…
世辞ではないのだが…
俺は〝お世辞が下手な父親代わり〟ってことか。
悪くないと思う。
まあ、父親代わりってだけで、この笑顔を見れるのならば、
やっぱり悪くないんじゃないかな?
「じゃあ、食堂に戻るか。
幸い、まだ勉強する時間はありそうだしな」
そう言いながら、携帯を拡げ、時間を確認するハヤト。
ー十六時三八分ー
まあ、少しくらいなら勉強出来るだろ。
携帯をポケットにしまい、立ち上がるハヤト。
美空がベンチにまだ座っていたので、右手を差し延べた。
美空は、ハヤトの手を両手で掴み、ハヤトに引っ張られるようにして立ち上がる。
その表情は笑っていた。