時計の針の行方


「そうか…
ああ、お前の食べたカレーライスの容器は片付けておくよ」



「どうした? 今日は、凄く優しいじゃないか」

ハヤトはそう言いながらニヤリと笑う。
上江田の真意は理解していた。
ただ、少しの悪戯心が胸の中から顔を出したのだ。


「お、俺はいつだって優しいだろ!」

焦る上江田。
面白い。

やっぱ、面白いよ。
コイツは。

しかし、心優しい上江田を、苛めるのに不憫に思えたハヤトは、上江田の提案を快く了承することにした。

「ありがとうな、上江田。
工藤さんも今日はありがとう」

そう言った後に、俺は昇降口に向かって歩き始める。
美空も、上江田と工藤さんにお礼を言って、俺の後を付けてくる。


ーーーこういう日常が“青春”なんだろうなーーー
< 144 / 159 >

この作品をシェア

pagetop