時計の針の行方


その様子を優しい目で見ていた麗奈が、ゆっくりと言葉を出す。


「ねえ、ハヤトちゃん。
最近、美空ちゃんとは上手くいってるの?」



「なんだよ…
第一、美空とはなんの関係もないよ」

冷麦を啜りながら答えるハヤト。
麗奈はアラアラと言った表情で、ハヤトの食べる様子を眺めていた。


「若いって素晴らしいことなのに~
体、持て余しちゃダメじゃない」


「………」

無言で冷麦を食べるハヤトをよそに、麗奈は言う。


「でもね、私、昔から思ってたの。
ハヤトちゃんには、平凡な暮らしをしてほしいって」



「なんでだよ…
親ならば、大物にさせたいとかいう願望があって普通だろ」

ハヤトが言うと、麗奈はとんでもないと、顔を横にフルフルと振った。


「あのね、ハヤトちゃん。
平凡な人生を歩むのは、とても難しいことなの。
大物になんかなるより、私はハヤトちゃんが平凡に、平和に暮らしてほしい。
今ではそう思ってるの」
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