時計の針の行方
「ねぇねぇ、どうだった?私のダッシュは?」
内海は、その言葉を聞いて、再度頭に血がのぼったが、いつの間にか、周りの学生がこちらを注目していたことによって、急いで立ち上がった。

「おら、走るぞ。ついてこい」

言い終わると同時に内海は走りだした。
一刻も早くここから立ち去りたかったのだ。
美空は、その様子をしばらく見ていたが、50m以上離れると同時に美空も走りだした。

周りの人は、消え去る2人を呆然と見つめていたが、すぐにその場から散らばっていった。

「ハッハッ…」
内海は、最初こそダッシュしたものの、すぐにバテてしまい段々とスピードが落ちていった。
一方、美空は慣れた様子で内海を後ろから追いかけていた。
いわゆる、女の子走りではなく、素人から見ても美しい走りかただった。

周りの風景が変わっていく。
先ほどまで、人がちらほらいて賑わっていた通学路から離れ、田舎道を2人は走っていた。
決して、整備されてるわけでもない細い道路。車一台通るのがやっとだ。
ところどころ、白線が消えている。
両側には段差があり、その段差を降りると草原が広がっている。
内海は、この草原で小さいころよく遊んだのだが、今は思い出に浸っている余裕はなかった。

マジ…キツい…

帰宅部で日頃、運動していない内海にとって、長距離とも言えなくもない距離を走るのは苦痛だった。
美空に負けたくない。
その思いだけが彼を走らせていた。
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