時計の針の行方
「そういう冗談がお前にとって、大事な話なんだな」
そう言ったあと、コーヒーを啜る。
苦い。ブラックだしな。当然か。
「なんか、勘違いしてない?」
「勘違いってなにが?なぜ、名前を知っているか教えてよ」
もはや、まともな答えが返ってくることは期待していなかった。
「まぁ、ちょっと待って。物事には順序があるわ。一つ一つ今から説明するから」
そう言った後、オレンジジュースを口に含む。
オレンジジュースの酸っぱさとさわやかな味で喉を潤し、美空は話を続ける。
「そうね…あなたはパラレルワールドって知ってるかな?」
「パラレルワールド?」
聞いたことはあった。
ただ、その単語だけは知っていたのだが、意味は知らなかった。
「そう、パラレルワールド。私が違う世界から来たのは、パラレルワールドの原理で来たの」
内海は首を傾げる。
「なあ、それって、難しくなりそうか?」
どうも、哲学っぽいのが内海には苦手だった。
なるべく、簡単な内容ならば話を聞く気にもなるが、難しいと理解するのが大変。
ようするに、かったるいのだ。
「全然難しくないわ。というより、複雑な原理も私には分からないから」