時計の針の行方
内海の家は、大正時代に建てられた家のため、木製住宅だった。
年季が入っている瓦屋根。
茶色の木製ベンチ。
さらには、石畳が敷き詰められており、威厳がある家だった。
家自体は広いのだが、部屋のほとんどが物置と変化していた。

しかし、今までは、母親と2人暮らしだったので困ることはなかった。
ただ、美空のための部屋をつくる余裕はなかった。
それに、内海は頭を悩ませていた。


「ほら、着いたぞ。ここだ」
2人は中庭を歩いて、玄関へとたどり着いた。

「随分と立派な家だね…」

美空は、素直に驚いていた。
東京でこの広さの家は、土地の問題でなかなか建てられないので無理もないことだが。

コンコン

内海は、ドアをノックして、母親がドアを開けてくれるのを待った。
この家には、チャイムというものはなかった。
伊達に、大正時代に建てられたのではないのだ。

ガチャ

ドアが開く音。
ドアが開いた先には、内海の母親が立っていた。
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