時計の針の行方
好きなこと、好きなこと…
そういえば、俺に趣味なんてあったか?
ハヤトは、苦悩していた。
今まで、つまらない日常生活をしていたのは、熱中するものが無いからだ。
けど…俺の好きなことって言っても……
ハヤトは、部屋の中を寝っころがりながら見回していた。
そこに、一枚のポスターが目に止まった。
2006年ワールドカップのフランス代表のポスターだ。
サッカー好きの上江田から、譲り受けたポスターなのだが、ハヤトはサッカーが嫌いではなかった。
むしろ、以前サッカー部に入ろうと思ったぐらいであった。(結局、走るのが嫌いなので入部しなかったのだが)
しばらく沈黙が続いた後、ハヤトが口を開く。
「なあ、腹減らないか?」
正直、ハヤトはあまりお腹空いていなかった。
ただ、この空気が我慢できないため、一刻も早くこの部屋から移動したかった。
「うん、居間に行こっか」
実際、美空も気まずかった。男の人の部屋に2人っきりになるのは、美空にとって初めてだった。
先ほどから、心臓の鼓動がいつもより早いことに、自分でも気付いていた。